2006年11月02日

LOVING WOMEN

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LOVING WOMEN - A Novel of the Fifties

1989 by Pete Hamill 『愛しい女』上・下 高見 浩 訳 河出書房新社



先日、せっかく一冊読むたびにその書籍のデータを蓄積していたファイルをトバシてしまったためにたとえば私が個人的に好む作家の作品であっても稀に(ではないかも…)表紙を見ただけでは未読であるかどうか一瞬判断に困ることがある。出だしの何行かを読んで気付くこともあれば中盤に差し掛かって始めてハッとすることもある。随分脳内細胞が劣化してきたものだ(汗)。
この作家、ベストセラーを連発していることもあって御存じのかたも多いだろうけれど一応念のため略歴など。

1935年、ブルックリン生れ。アイリッシュ系移民の息子の例にもれず貧困から苦労がたえず高校中退後、本作の主人公マイケル・デヴリンと同じく海軍に入隊、除隊後コマーシャル・アートの仕事を経て『ニューヨーク・ポスト』の記者として採用されジャーナリストとして頭角を現わす。

『南部では何世紀ものあいだ、ドラムが禁止されていたというのだ。奴隷がドラムを使って信号を送るのを大農園主たちが恐れていたかららしい。たとえば、“今夜、農園主を殺せ”というような合図を恐れていたのだろう。だから、ヒルビリー音楽はリズムをとる役目をベース・プレイヤーとピアニストの強靱な左手に委ねている。………いかにもハンク・ウィリアムズ風の鼻にかかった声で歌っていた。』(本文より抜粋)

青春小説なのであるが、Pete Hamill自身の経験ともダブる記述が多くある意味自伝的な色合いもありそうで、彼の戦争や人種差別に対する考え方や絵画や音楽に向けた深い思い入れが垣間見られる。
“とてもエロティックな小説なんだよ”と本人が語っているように、たしかに入隊まもないマイケルが経験した恋愛が作品の骨格を形作っていてその描写も時に激しいものではあるが、肉付けとなる軍隊での人間関係や家族との関わり、友人たち各々の考え方や人となりの描写がこの時代のアメリカを鋭く表現していて秀逸だ。

現在のハリウッド映画のただただドンパチや、日本の低予算でバービー人形のような“モデル”然としたタレントが出演している陳腐且つ非現実的な映画を観ている人たちに読んでもらいたい作品だ。
ほんとのアメリカってこんな部分があって、はじめてアメリカなんだよと。
深い処まで認識せずにただただアメリカ、或いはブランド?、それとも“流れ”に押しながされてはイケナイのだぁ!!と。

先ずは“過去を正しく認識し、今を学ぼう”と私は自身に言い聞かせるのであった(汗)。
posted by tori's 108 at 17:46| Comment(14) | TrackBack(0) | books | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あ〜私も既読の本を〜って何度もヤッテマス。
CDとかも判らなくなってて。整理整頓が苦手だから、棚にとりあえず突っ込むだけ。嫁が2冊あるのを見つけると怒り出すし。

アメリカ、ですね。アメリカ。総て、富も貧困も差別も喜びも何もかもあるアメリカ。

しかし、ドンパチだけの映画をたまにしか見ない、見れない私もいかんなぁ。新潮新書とかしか読む事もなくなっているし。
Posted by 泥水飲込 at 2006年11月02日 18:56
とは言いながら、ドンパチやどぉ〜ん!がったぁ〜んだけの映画もそれなりに頭を空っぽにしてくれる事もあるので一概には言えませんが…。
しかし、この作品にあるように人種の問題一つとっても幅があり、奥行きが有るって事をタトゥーなんかで真似るより先に知って欲しいものです。上辺だけで滑るのはどんな阿呆でもできますからネ。
Posted by torigen at 2006年11月02日 19:30
torigenさんってすごい!

>『南部では何世紀ものあいだ、ドラムが禁止されていたというのだ。奴隷がドラムを使って信号を送るのを大農園主たちが恐れていたかららしい。

そうだったんですか…。

音楽を奏でることすら禁止されていたのですね…。
今、私の耳元にあの、James Gadsonのおおらかなドラムスの響きが流れています、、。

>ほんとのアメリカってこんな部分があって、はじめてアメリカなんだよと。
深い処まで認識せずにただただアメリカ、或いはブランド?、それとも“流れ”に押しながされてはイケナイのだぁ!!と。

まさにその通り!!!
素晴らしい!!!

感動しました。

また、色々と教えて下さい。

Posted by marie at 2006年11月02日 20:51
むかし「ルーツ」が流行ったときに、南部の黒人奴隷関連映画がいくつか公開されましたが、その中に「ドラム」というのがありました。きっとそういう意味合いもあった映画なのでしょうか。
読書し始めたのが20歳からと遅い私は今のところまだ新しい本を読み続けることが出来ています。
でも、内容を忘れるのが早いのでそろそろ復習に入ろうかな〜。
Posted by J・AGE at 2006年11月02日 21:08
あぁ〜びっくりしたぁ!
今、調度kanaちゃんち覗いてた処だったんだよぉ(汗)。
で、何かコメントしようかなぁ…と思ったのだけれど、皆さん雰囲気良かったので壊さないように…そぉっと帰って来たら…(爆)わはは。

私が凄いのでなくて、Pete Hamillがネ。
ディープなリアル・アメリカを肌で感じて良いところも悪いところも自分なりに“解釈”するのが第一段階だと思うデス。
そこいくと、私などまだまだ。音楽の何たるかなど一生わかんないかも知れないけれどネ、わっはは。
ナドと書いてるうちにも、loveが暴れまくっている(汗)。

今日は、Earl KlughとHiroki MiyanoのGuitar Duoで『Hotel California』聴いてます!う〜ん、アコースティック・ギターの繊細な調べを聴きながらのお酒もまた、オツなもの。
近くだったら、今ドコソコで一杯やってるけど来ない?って言えるのになぁ…(爆)。で、心洗われる音楽に浸るってのはどうです?わはは。
Posted by torigen at 2006年11月02日 21:19
Jさん、大丈夫?

いやぁ、読書に限りませんが人間個人が体験できることってたかが知れているでしょ?それをまかなってくれるのが本で有り、音楽だと思うのです。それぞれの作者やその廻りの人たちの感性が伝わるからネ。
で、経験したことより一歩奥深い“何か”を感じとることが出来たらそれこそFeels so Good!かもですよネ。
Posted by torigen at 2006年11月02日 21:26
ピート・ハミル。昔、読んでました。小説じゃなくてエッセイが多かったですね。小説は『ボクサー』が印象に残っています。

ピート・ハミルは日本人女性ジャーナリスト&作家の青木冨貴子の夫でもある。青木とハミルは9/11を経験していて、本になっていますが、いつも緻密な取材をする青木冨貴子でさえ文章が乱れていました。

しかし、万が一9/11が米国政府の自作自演だったらどうするのだろうと思うほど「陰謀説」の本が出てきましたね。わけがわからない。

ハミルさんといえば「幸せの黄色いハンカチ」(ハンカチじゃなくてリボンか)。(^_^)v
Posted by asianimprov at 2006年11月02日 23:23
なんだかピート・ハミルという名前に聞き覚えがあると思っていたら、私もNew York City Storyという本とレコードを組み合わせた作品を買って持っていたことがありました。なんだかジャケ買いに近かったので、知ってるとは言えないのですが、またまた思い出が蘇りました。あちこちに出没してスミマセン。どこも興味深くて。^^
Posted by chi-B at 2006年11月03日 00:00
幸福の黄色いハンカチ (1977)ですか?
これって、高倉健の…。映画は観ましたが(当時)原作がPete Hamillだとは思ってませんでした(汗)。これのアメリカ版も確か観た記憶が…asianimprovさん、記憶がだんだん怪しくなって来ました(爆)。青木さんのものは未読、わはは。

chi-Bさん、いろんなpostにご登場有り難う。
私、この人の文体が滑らかで一気に読ませる筆致が好きで何度か読み返しています。もう72歳くらいのお年ではなかったかいな?知日派でもあり、上のasianimprovさんが書いておられるように青木さんとご結婚されています。
Posted by torigen at 2006年11月03日 04:10
買った本もレコードも、当時の私にはその良さわからなかったと見えてジャケットしか覚えていません。。。情けない!青木さんと結婚されてることだけは知ってましたが、それもどこかで読んだだけの浅い知識です。大人ぶろうとしてたんやろなぁ。。。恥ッ。

torigenさん、初めてお話した頃に、私が生まれて初めて買った英語のレコードが”幸せの黄色いリボン”だったこと話しましたね〜。思い出してしまいました。日本の映画は学校の映画鑑賞で観ました。自分がレコードを先に聞いてるもんだから、リボンをハンカチにしてるところや、日本に強引に置き換えてるところが、なんだか気に入らないと思ってた生意気な高校生でした。(アメリカかぶれの初期症状だったと思われます。)あ、でも桃井かおりさんは好きです。レコードも集めてました!
Posted by chi-B at 2006年11月03日 13:21
私は武田鉄矢と桃井かおりのキス・シーンでドン引き。
だって、奇麗じゃないんだもの…わはは。
高倉健といえば、このblogにも時々来てくれているkanamarieちゃんがイタリアだったかを一人で歩いていると『お嬢ちゃん、こんな処を一人歩きしていると危ないヨ!』っていきなりおじさんに言われて『えっ?』って驚いているとそれが高倉健さんだったってことがあったらしい、わはは。面白いネ。
Posted by torigen at 2006年11月03日 13:58
あの映画では、健さんが「おまえも九州の男だろう。」と武田鉄矢を叱るシーンがおかしかったですね。セリフははっきり覚えてませんが。桃井かおりも、電車の社内販売員なんて役はもう出来ないだろうし。時代を感じます。(笑)

ピート・ハミルもマイケル・ムーアもアイルランド系で、独特の反骨精神があります。ヤワなだけのリベラルではない。
Posted by asianimprov at 2006年11月03日 14:54
私はこの映画をビラ下公開券で観ました。俺達の交響楽と二本立てでした。俺達の交響楽は実在の素人合唱団の話ですが、最後に歌った舞台が神奈川県の川崎の川崎グランドという一番でかい映画館でした。今はそこもシネコンの一画です。
ビラ下公開券は、お風呂屋さんに映画のチラシをはらせてもらうかわりにおまけについてくるお礼の鑑賞券!お風呂屋さんのおばさんにいつももらってました。
Posted by J・AGE at 2006年11月03日 15:55
asianimprovさん、ども。
二人共、半端な人生歩んでないっていうかドン底を見て来てますから肝っ玉が座っていますよネ。骨太です。

Jさん、都会の下町情緒って感じがいいですネ。お風呂屋さんか?銭湯じたい何年行ってないだろうか?風呂上がりに腰に手を当ててキューっと一杯って感じ。
Posted by torigen at 2006年11月03日 16:48
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