2008年02月25日

A DISHONOURED SOCIETY

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A DISHONOURED SOCIETY / John Follain / 1995
すべてはマフィアの名のもとに / 福田 靖 訳
三田出版会

THE AMERICAN GANGSTAR / 2007
by  Ridley Scott


豊富な資料に基づきシチリアン・マフィアの実態を著らわす。

シチリアという地政学的にいえば、ヨーロッパとアフリカを結ぶ中継地であり、地中海の東西を繋ぐ要衝、豊かで肥沃な土壌に恵まれた土地でもあったシチリア島には、歴史上常に列強が侵略を重ねた。
ギリシャ人、カルタゴ人に始まりアラブ人、ノルマン人から果ては第二次世界大戦時の英米軍まで、その時々の支配者によって蹂躙されてきた史実を持ち、最後に北部イタリア人によってイタリアに統合された。こういった背景が、シチリア人達の反権力意識に多大な影響を与えてきたことは想像に難くない。
この永く続いた外国支配が物理的に島に大きな傷跡を残しただけではなく、民衆の意識の中にも重大な影を残したのかも知れない。
ペアーティ・パオリ(12世紀ころに生まれた秘密組織、外国統治者の圧政から貧民を救ったと伝承されている)や、あたかもその末裔かのように喧伝されてきたマフィアのように、自警団的要素を持ちながらも、当然の流れとしてシチリアにおける権益に一番近い存在として発達した用心棒たちは次つぎと暴利をむさぼるようになって行く。
労力なくして利益をあげたい外国人為政者たちは、シチリアからの収奪をより確実に実効性あるものにするため土地の荒くれ者や山賊などを雇い、限定した特権を彼らに与える代わりに収益を確実なものとしようとしたのだ。これが、後にコーサ・ノストラと呼ばれるシチリア・マフィアの原点となる。これにはローマ・カトリック教会も多いに加担し、独自に法を執行し、その時々の為政者に恭順を示す事がない処か、活発化する宗教裁判は、以後、公権力に歯向かう結社のような性格を帯びるに至り、この反権力志向(とはいっても、カトリック教会自体が権力組織なのだが)が後のマフィアのルーツにも繋がる重大要因にもなるのだった。
マフィアの触手は宗教者を巻き込む形で、より一層一般住民に深く浸透してゆくのだが、宗教を上手くリンクさせながら神秘性をも臭わせて、より恐怖を煽ったわけだ。
こうやって、地元の経済、政治を国家のなかの国家という形で己の欲望を満足させていくのだが、過去の統治者が出来なかった対コーサ・ノストラ戦において初めて壊滅的打撃を与えた組織があった。それはムッソリーニ率いるファシスト国家だったのだが、この独裁政治集団をもってしてもコーサ・ノストラの息を止めるまでには至らなかった。この辺りでは殆どやりたい放題の輩の一騎打ちっていう悪魔vs極悪の様相を呈して来る。
その後、少ないながらも反マフィアを実戦する判事たちが決死の闘争を行うのだが…。

今日、EUが発足してヨーロッパ大陸は今まで以上に自由に物や人が移動できるようになった訳なのだが、これはコカインや人身売買の流通も自由に限りなく近くなったってことでもある。
コロンビア系、中国系、日本のヤクザなどなど…もはやシチリアン・マフィアにとって国境は無いに等しいと言えるほどにその枝は蔓延っているのだが、殆どの人たちは関心がないか忘れるかしているのだろう…汗。しかし、そのピラミッドの一番上にいるのがコルレオーネ・ファミリーなのらしい。「The Godfather」のヴィトー・コルレオーネではなくて、コルレオーネ地方のファミリーなのだが、Mario Puzoのドン・ヴィトー・コルレオーネはアメリカに渡った際、主人公が名前を届け出る名字を出身地であるコルレオーネからとったものだ。

人間のしでかす醜悪なおこない、嫉妬、差別、権力志向などなど数えきれない悪が存在するのだが、ある意味ロマンティシズムを感じさせかねない修飾が施されているが為もあって人は引きつけられてしまうのかも知れないのだが、最後に気づくのは恐怖な訳だ。

奇しくも、マフィア話しに偏向しているようではあるのだが、まったくの偶然だ。その偶然がこれまた映画「THE AMERICAN GANGSTAR」と「沈黙の掟 ~マフィアに爆殺された判事の遺書 /
Giovanni Falcone」という本に繋がってくるのだから面白い。
「THE AMERICAN GANGSTAR」のほうは'70年代に実在した黒人系組織のボスの運転手で、ボスの死後着々と自らの組織を拡大し、イタリア系マフィアにも一目置かれる存在となったFrank Lucasと、汚職にまみれた警察内にあって頑に自ら信ずる正義を貫こうとした刑事Richie Robertsの実際に存在した男たちを描いた実録物に近い仕上がりを見せる映画なのだが、丁寧な作りで淡々と見せてゆく流れはいつものRidley Scottとは少し違った趣向で興味深い。ドンパチだけでお茶を濁すことなくじっくり腰を据えて制作された大人ちっくな映画だった。
posted by tori's 108 at 00:00| Comment(6) | TrackBack(0) | books | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日の記事といい、続くなぁ。って、本当になんかこういう偶然ってあるんですよね。OOの話をしてるとその人のニュースが流れたりね。

あれは小学5年生、マフィア映画が流行って。ゴッド〜などですが。子供心に怖いなぁ、、、って。ヤクザ映画の指詰めもトラウマなんですけど。
シチリアっていう我々の想像できない場所。侵略という想像できない歴史。いや、想像できるとかではなく、国際化の進む地球人なら理解する努力をするべきで。
映画は〜面白そうですねぇ。

(途中、黒い字のところ、、、、読みにくいかも)
Posted by 泥水飲込 at 2008年02月26日 07:57
1文字でもコピー&ペーストすると後の文章も何もかも勝ってにこうなってるんだわ。面倒なので放っております、わはは。
Posted by torigen at 2008年02月26日 17:01
あれでもアカデミーはとれないのですね。本当にすごいエンターテインメント大国だな〜、と思いました。
Posted by J・AGE at 2008年02月26日 18:54
政治的にも経済的にもその時々で良くも悪しきも反映するってことはあるですよネ。
そのうちDVDで再鑑賞するつもりであります。
不覚にも鑑賞中に意識が薄れた?部分があったもので…わはは。ただの睡眠不足なんですけれどネ。
Posted by torigen at 2008年02月26日 20:04
「THE AMERICAN GANGSTAR」これ、見たいなあ〜と思ってたんだけど・・

70年代への拘りもあって、尚更・・
Posted by ラ・マンチャの男 at 2008年02月26日 20:58
たまに訪れる発砲音が脳裏に残りますネ、ラさん。
Denzel Washington、たまに最近悪玉を演ってますけれどやはり善玉に見える。ま、この映画では善悪よりマフィアと刑事の人間的な部分の描写を重視なので直接的には善悪というより生き方の問題なのですけれど…わはは。
Posted by torigen at 2008年02月27日 03:50
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